ピアノの蓋(大屋根)のこと
2019.07.01
前のブログに書いたミルチャさんの演奏会を企画主催してくださったお二人にお礼メールをさしあげたところ、Kさんから「残念だったのはリハーサルでは半開だったピアノの蓋、本番では閉めて弾いたこと」スタジオの責任者としてはどう思いましたか、時間があるときに感想を聞かせてくださいというお返事を頂戴しました。

私も、リハーサルが始まる頃にスタジオを一度出て本番前にスタジオに戻ったらピアノの蓋が閉まっていたので「あら、閉めることにしたのね。」と思ったのでしたし、演奏を聴きながらピアノの蓋は開けたほうが良いのじゃないかしら?」と思いましたし、休憩時間に「蓋を開けたら良いのじゃないかしら?」と言うお客様の声も聞こえておりましたので、ブログに書いておこうと思います。Kさんにお返事するとしても長いメールになってしまいそうですから。

ピアノの大屋根の役割ということで、まず一般論から先に書きますね。ピアノの大屋根は反響板の役目。群馬のスタインウエイでJR東日本、大人の休日倶楽部主催のピアノの構造や歴史の講習会に参加したときに「演奏を聴くのに手元が見える左側の観客席に座りたがる人が多いけれど、響きからすると大屋根の反響が聴こえる右側というような解説がありました。プラネットのピアノに関して言えば、ピアノソロのときには大屋根は全開、バイオリン、フルートなどの伴奏をするときには半開という二段階に分かれています。(三段階に分かれるピアノもあるようですが。)

ミルチャさんの演奏はダイナミック。ステージの上にピアノがあって広い会場での演奏なら大屋根を全開して思う存分弾いても大丈夫なのでしょうが、プラネットではピアノからすぐのところから客席が並んでいますから、一列目の人にとっては音量が大きすぎてしまう懸念があります。今回、調律師さんがリハーサルを聴きながら「ミルチャさんは会場の響きをわかってかなり抑えた弾き方をしていますよね。」と言いながら帰られました。ですから私は<抑えて弾く>のか蓋をしめて<いつも通りに近い状態で弾く>のかということになったら、のびのび弾けるほうが良いのかもしれないと思いながら聴いておりました。休憩時間にKさんが蓋を半開にしてみたりなさって控え室に行かれたので「後半は半開にするのかしら」と期待しましたが後半も閉めた状態でした。控え室でミルチャさんは「Kさんが勧めるなら半開にしてもいい。」と言われたけれど迷っているようだったので、Kさんは演奏者の意向を優先すべきと考えてそのままになさったのだそうです。

スタジオは、実は間仕切りのあるところを境に客席での響きが変わります。私は冗談に「チケット料金を変えたいぐらい。」と言うこともあります。後ろの席の人が前の席に移って、比較して聴くことは滅多にないので不満の声があがることはありませんが、50人ぐらいでしたら、ゆったり椅子を並べるよりは、詰めても客席がすべて間仕切りの中に設定することをお勧めしたいです。スタジオの左右の壁は音響を考えて微妙に膨らんで(台形みたいに)なっています。その音響効果があるのが間仕切りの前までなのかもしれません。某会場でピアノ演奏を聴いた時に、ステージの下になってしまう前列の客席から自由席だったので休憩時間に後ろの席に移ったら、やや高くなっている後ろの席の方が良い響きで聞こえたことがあります。ピアノの大屋根の反響の効果と部屋の造りとあいまってのことだったと思います。公共の何千人も入るような大きなホールでもマイク使わずに会場全体にピアノの音を響かせるのですから大屋根の効果ってすごいものがありますよね。(ピアノも大きいですけれど)

最近は使わなくなっておりますが、スタジオには半開と全部しめる中間に通称<かまぼこ板>と呼んでいる蓋をちょっとだけ開ける道具があります。スタジオでのリハーサルを聴かせていただいたときに、フルートとピアノなどのような場合、バランスを聴いてそのかまぼこ板をお勧めすることがあります。「かまぼこ板を使うのは他の楽器とのバランスを考えて」という思い込みがあって、今回のピアノソロでは全く思いつきませんでしたが、それを使えば良かったのかもしれないと思ったりしています。時間のあるときにかまぼこ板の写真を撮ってのせておこうと思います。スタジオの備品としてホームページにも載せておいた方が良いのかしらね。

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